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USCレポート vol.5

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TOPICS



 『HCピート・キャロル』

   今回はHCのユニークなところと、そのおかげでできた私の貴重な体験 を紹介します。
 毎回グランド練習前には全体ミーティングがありますが、そのミー ティングの前には必ずその場を盛り上げるパフォーマンスなりスピーチ なりを誰かがすることになっています。それもその場でHCが指名し、 選手は突然の指名に困りながらも一芸やスピーチを披露し、場を盛り 上げてからミーティングに入るのです。この辺がHCのユニークなところ で、外から見ていると偉大で近寄りがたい感もあるのですが、時には 選手と一緒に自分も上半身裸になり大騒ぎして楽しみます。

 先日は自らがサングラスをかけマイクを持ち、キャンパス内に街頭 インタビューへ出て、バスケットとアメフトの人気を道行く学生に聞い たり、「どちらのHCが好きですか?」と両方のHCの写真を見せ質問し、 それに学生が「会ったことがないので、本人に会えば・・・」などと 本人を目の前にして話しているのをYouTubeで流したりと、とても ユニークな面があります。そして、このようなところからも選手や スタッフから非常に親近感を持たれています。しかし、これらもチーム をまとめ、選手を集中させるために全て計算してのことなのです。

 それを象徴する出来事を私も体験しました。
 話は練習前のミーティングに戻りますが、特に異常な盛り上がりを みせるのがスクリメージの日で、選手もいつもより一段と緊張が高まり、 士気も非常に上がっています。それをさらにショートスピーチや パフォーマンスでヒートアップさせてミーティングに入るのです。 私がチームに合流してちょうど一週間目の日もスクリメージの日で、 私はミーティングルームの端で、これから始まるパフォーマンスを楽しみ にしていたました。するとHCと目が合い、突然私の所へ来て、「今日は 君がスピーチしろ!日本でやっているように日本語で良いからやって みろ!」と言って来たのです。面喰っている私に、他のアシスタント コーチも「大丈夫か?」と心配して私の所へ来ましたが、とても断れる 状況に無く、そうこうしているうちに、HCが前に出て私を紹介してしまい、 スピーチの内容も考える間もなく皆の前へ出ることになりました。  私も日本から来たダメコーチと思われても嫌なので、思い切って前へ 出たのですが、久しぶりに頭の中が真っ白になってしばし言葉が出ません。 しかし、その辺は選手もわかっているようで、私が一言二言話すとその場 を盛り上げてくれ、スピーチとしては大失敗でしたが、何とか選手の協力 を得て終えることができました。
 私は変な汗を大量にかくとともに、HCと目を合わせるのがしばらく 怖くなりましたが、後になってやって良かったと思ったのは、この一件 以降、私に話しかけてくれる選手が格段に増え、選手に認識されるように なったことです。きっとその辺もHCの計算に入っていたのでしょう。

 通常ならここで話は終わりなのですが、実はまだ続きがあり、次の週明け のコーチミーティングの際に、HCが「もう一度スピーチね!」と今度は事前 に言って来たのです。正直、もう一度チャンスをもらい名誉挽回したいとは 思っていましたが、その機会がまさかこんなに早く訪れるとは思わず、驚き ながらも「いつですか?」と聞くと「次の土曜日」と言うのです。
 次の土曜日?というと春季練習最終日の大事なスプリングゲームの日では ないですか?このスクリメージは以前報告した通り、Trojans Huddleという コロシアムに2万人ものファンを集めてゲームを行うチームにとっても非常 に重要な日です。私は自分の耳を疑い「本当ですか?」と何度も聞き直したの ですが、「もちろん」とさらっと答えられ、これまた断る隙が全くありません。 この大役は私では・・・と思いつつも、結局やらせてもらうことになりました。  前回は突然のことだったので、その場の勢いで終わりましたが、逆に事前 に言われると今度は失敗することができないと変な緊張が頭をよぎり、その週 はどんな事を言ったら選手が盛り上がってくれるのかで頭が一杯になりました。 困り果てて、私の師匠であるPatコーチに質問すると、とにかくエネルギッシュ に話すことが大切だとアドバイスされ、また、選手やチームが好きな言葉を 教えてもらいました。そして、最後はTシャツの襟首にあらかじめ切れ目を 入れて、盛り上がってきたところでTシャツを引き裂き叫べばOK?とニコニコ しながらアドバイスされ、当日を迎えました。
 最初は全米を代表する選手の集まるチームということから異常な緊張があり ましたが、相手は大学生、日本で話している気持になってやろうと気合いを入れ、 「ここは東伏見だ」と自分に言い聞かせ皆の前に立つと、自分でも驚くほど 上手く行き、その場も盛り上がり、今度は上々の出来でした。コーチ達も相当 不安だったようですが、非常に喜んでくれ、何とか大事なゲーム前の大役を 終えることができました。そして今度はコーチやスタッフからもしっかり認識 されるようになったのです。

 このように、HCは私のように外部から来た人間にもチームに溶け込ませるため に貴重な機会を使うなど、様々なことに気を配り、時には奇抜なアイディアで チームをまとめているのです。正直なところ雲の上のような存在で話もろくに できないのではと思っていましたが、非常に明るく気さくで、しかもチームの いたるところに気を配って運営をしていることに常に感心させられます。  USCは全米より優秀な選手をリクルートして来ますが、ただ単に良い選手を 集めるだけではなく、その選手をいかに一つにまとめてチームを作っているかと いう点など、その手法は非常に勉強になるところです。

                  助監督 濱部昇
      

TOPICS
「ピート・キャロルHC(右)と」


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  ブログ「USC Rips It」
※練習風景などが動画で見られます


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  • (2008年6月26日)

     


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